なぜFAX注文の確認電話や対応漏れが起きるのか¶
例えば、受付担当は注文書を持っている、営業担当は納期を口頭で確認している、倉庫担当は出荷指示を待っている。この状態では、それぞれが仕事を進めていても、電話に出た人には全体が見えません。
- 注文書を受け取ったことと、注文内容を確定したことが区別されていない。
- 欠品や納期の確認待ちでも、誰が返答するのか決まっていない。
- 変更の連絡が別の紙や担当者のメモに残り、倉庫まで届かない。
見直す対象は、注文が入る手段に加えて、受付から確認、出荷へ渡す情報とタイミングです。
IPAの公開事例から学べること¶
IPAが2026年4月15日に公開した株式会社福井の事例では、仕入先ごとにFAXや紙など発注方法が混在していました。同社は現場のシステム利用と課題を洗い出し、受発注の電子化を進めています。記事では、受注件数の6割以上がEDI化されたと報告されています。EDIは、企業間の注文などの取引データを電子的に交換する仕組みです。
ここから小規模な現場に生かしたいのは、使っている仕組みと業務の流れを整理する姿勢です。以下の台帳や2週間の進め方は、この事例を踏まえたエイデックマネジメントの実践提案であり、事例企業が実施した手順や当社の導入実績を示すものではありません。EDI化の比率や改善効果も、同じ結果を約束するものではありません。
手順1:まず1件の注文を、受付から出荷まで追う¶
直近の注文書を1件選び、「誰が受けたか」「どこへ渡したか」「納期を誰が決めたか」「何を見て出荷したか」を担当者と確認します。欠品があった注文も1件見て、止まった場所を探します。
そのうえで、試す範囲を「取引先1社」「商品群1つ」などに絞ります。すでに販売管理システムにある商品・数量・納期を別の表へすべて写すと、二重入力と食い違いが増えます。既存システムの受注番号を台帳に載せ、台帳は確認待ちと引き継ぎだけに使う方法もあります。
手順2:受発注台帳の項目と記入単位を決める¶
出荷日や状況が商品ごとに変わるなら、1行を「注文番号×商品明細×出荷予定のまとまり」にします。注文書1枚を1行にまとめると、一部だけ欠品した注文を追えなくなります。複数行に分けても、同じ注文番号でまとまりを確認できるようにします。
- 注文を特定する項目:社内管理番号、取引先、先方注文番号、受付日時、受付経路、注文書の保存先。
- 内容を確認する項目:商品コード・規格、注文数量・単位、希望納期、回答済み納期。希望と約束した日付を分けます。
- 進めるための項目:状況、担当者、次の作業、その期限、最終更新日時・更新者。
- 分納を追う項目:今回出荷数量、累計出荷数量、残数量、次回出荷予定日。数量が変わったら元の注文数量との整合を確認します。
最初からすべて入力必須にはせず、受け付けた時点で分かる項目から登録します。空欄の納期を「未定」とするのか「未確認」とするのかも統一してください。
架空の記入例:10個の注文に対し、6個だけ先に出す場合¶
以下は運用を考えるための架空例です。A商店から商品Bを10個、11月10日希望で受注したとします。
- 受付時:社内番号「J-1107-001」、明細「01」、数量「10個」、希望納期「11月10日」、状況「受付」、担当「受付担当」を登録。注文書を保存してリンクします。この時点では納期を確約しません。
- 在庫確認後:6個は出荷可能、4個は入荷確認待ち。状況を「確認待ち」、次の作業を「仕入先に残り4個の入荷日確認」、担当を「仕入担当」、期限を「11月7日15時」とします。
- 取引先の了承後:6個を11月9日に出荷、残り4個は入荷日確認後に回答する、と合意した内容と連絡日時を記録。先に出す6個と残り4個を行で分け、残りの納期が確定したように見せないようにします。
- 出荷後:出荷担当が6個の出荷実績と日付を更新。注文全体は「一部出荷」のままにし、残り4個の対応担当を残します。全10個の出荷または合意した取消処理を確認してから完了にします。
手順3:「誰が、いつ、何を更新するか」を決める¶
状況の名前は、担当者によって意味が変わらないことが大切です。例えば「受付→確認待ち→出荷手配済み→一部出荷/出荷完了」を基本に、「保留」「取消」を用意します。「確認済み」だけでは、内容確認なのか納期回答まで済んだのか分からないため、完了条件を具体的にします。
- 受付担当:受け取った時点で管理番号を付け、原本と照合。FAX再送は先方注文番号・商品・数量を既存の記録と確認してから、新規注文か再送かを判定します。
- 受注・仕入担当:在庫、規格、納期を確認し、取引先へ回答した時点で約束した内容を更新。未解決なら次の担当と期限を入れます。
- 出荷担当:出荷指示と実物を照合し、出荷処理の直後に数量と日付を更新。送り状を作っただけで出荷完了にしないルールにします。
- 責任者:始業時と出荷締切前など、現場で決めた時刻に「期限超過」「担当者なし」「残数量あり」を確認。不在時に引き継ぐ代行者も決めます。
電話を受けた人は台帳を見て答え、未確定の内容は担当へ確認します。台帳に書かれていない納期を、その場で約束しないことも共通ルールにします。
手順4:欠品・注文変更・取消の扱いを先に決める¶
- 欠品:未回答のまま放置せず、確認先、次の連絡期限、取引先への回答担当を記録します。代替品は相手の了承を得てから確定します。
- 数量や納期の変更:元の情報を黙って上書きせず、変更前後、依頼日時、依頼者、受付者、了承内容を変更履歴に残します。倉庫へ指示済みなら、変更が届いたことまで確認します。
- 取消:行を消さず「取消」にして理由と日時を残します。出荷手配が進んでいる場合は、止められたかを担当者が確認してから取引先に回答します。
顧客の注文情報を載せた台帳は、業務に必要な人だけに共有し、閲覧と編集の権限を分けます。取引先には、その会社の注文に必要な情報だけを伝えます。社内台帳のURLをそのまま渡す運用は避け、送信先と内容を確認します。
手順5:2週間だけ試し、確認の手間を測る¶
- 開始前:対象の注文について、状況確認の電話・社内確認の回数、回答までの時間、未処理の件数を記録します。数え方と対象範囲を決めます。
- 1週目:限定した範囲で台帳を使い、毎日短時間で未処理を確認。入力しづらい項目、更新が遅れる場面、二重入力をメモします。
- 2週目:項目と担当を調整し、同じ数え方で比較。注文量が違う場合は、確認回数を注文100件当たりなどにそろえて見ます。
- 終了時:確認の手間が減ったかに加えて、入力時間が増えすぎていないか、原本との数量違いがないかを確認。続けられる運用になってから対象を広げます。
例えば「確認電話が10件から6件になった」と評価するなら、対象期間・注文件数・数え方も一緒に残します。この数値は説明用の例で、実測結果ではありません。
Excel・共有台帳から、受発注システムへ進む目安¶
複数人が別々のExcelファイルを持つと最新版が分かりにくくなります。共有する場合は、社内で承認された共同編集の仕組みを使い、保存場所を一本化します。状況は選択式にし、期限を過ぎた未完了行を見つけやすくすると、確認漏れを探しやすくなります。
一方、在庫の同時引当、複数拠点の出荷、単価・与信管理、受注から請求までの連携が必要なら、表の工夫だけで抱え込まず販売管理・受発注システムを検討する段階です。取引先とのEDIやWeb受注は、相手が使える方法、費用、既存システムとの接続、FAXで受ける注文の扱いを確認してから進めます。
FAX注文管理でよくある質問¶
FAXをやめないと受発注DXはできませんか?¶
FAXが残っていても始められます。まずは受けた注文を特定できるようにし、確認待ち・担当・次の期限を共有します。注文の電子化は、取引先と社内の運用が合う範囲から検討します。
注文書をスキャンすれば入力は不要になりますか?¶
画像を保存するだけでは、数量や納期を一覧で追えません。OCRで文字を読み取る場合も、商品コード、数量、単位、日付の照合が必要です。読み取った内容をそのまま出荷指示にせず、担当者が原本と確認する工程を設けます。
最初に必ず決めておくことは何ですか?¶
1行の単位、管理番号、状況の意味、更新担当とタイミング、未解決の作業と期限です。この5つを、実際の注文書を見ながら決めるところから始めてください。
自社の注文書を1枚、机に置くところから¶
明日取り組むなら、受付担当と出荷担当で注文書を1枚見て、「今どこで止まっているか」「次に誰が何をするか」を確認してください。答えがすぐ出ない箇所が、最初に共有したい情報です。
エイデックマネジメントでは、中小企業・個人事業主の現場に合わせて、注文経路の整理、台帳の項目、担当者の更新ルール、共有範囲、将来のシステム連携をご相談いただけます。「FAXの確認電話が多い」「担当者が休むと状況が分からない」など、今困っている場面からお聞かせください。業務改善・受発注管理のご相談はこちら。
執筆:エイデックマネジメント/公開・更新:2026年11月7日
出典:IPA「地域DX推進ラボ DX認定取得事例~株式会社福井」(2026年4月15日公開、2026年11月7日確認)。公開事例の説明以降に示した台帳、記入例、運用手順は当社からの提案です。



